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アニマルセラピーとは?

アニマルセラピーは国際的にはAnimal Assisted Therapy(AAT=動物介在療法)と呼ばれ、動物を治療の一部として介在させることにより、患者の身体的、精神的、社会的機能の回復を目的とする医療行為の一種です。

アニマルセラピーの歴史

アニマルセラピーの歴史は古く、1792年に設立されたイギリスのヨーク収容所という精神障害者施設で、ウサギやニワトリなどの動物を飼育させて患者たちに自制心を身につけさせるという試みが記録されています。この試みを受けて1860年、ベスレム病院が病棟内での動物とのふれあいを実施したところ、入院患者の気力が向上したという記録もあります。

また、ドイツのてんかん治療施設では、症状軽減のためにペットを用いるという試みがなされ(1867)、アメリカ・ニューヨークの陸軍航空隊療養センターでは、農場で家畜の世話をしたり、公園で動物と接することで気分転換を図ることを積極的に奨励しました(1942)。ちなみに精神分析学の創始者・ジークムントフロイトが、患者にリラックスしてしゃべらせるため、自分の傍らにチャウチャウを座らせて診察に当たったという話は有名です。

一方、近年におけるアニマルセラピーの発展に尽力したのは、臨床心理学者ボリス・レビンソン(Dr.Boris Levinson)です。人とコミュニケーションをうまく取れない子供に犬と遊ばせたところ、子供が自発的に犬と接するようになり、最終的には緘黙(かんもく= 原因は不明だが、明瞭な言語反応が欠如した状態)の症状が改善された、という彼の研究報告(1969-1979)からアニマルセラピーが広く関心を集めるようになり、今日の発展につながったという経緯があります。

現代のアニマルセラピー

 臨床心理学者レビンソンの研究から発展したアニマルセラピーは、現在デルタ協会(Delta Society)が米国内での研究と普及に尽力しています。デルタ協会とはアメリカ・ワシントンに本部を持ち、各地に支部を有する大規模団体で、セラピー・アニマルを介して人々の健康を向上させることを目指しています。また、全てボランティアによって運営されているNational Capital Therapy Dogs,Incは、学校や図書館、各種病院やシェルターなどへ赴き、AATを提供しています。

一方、イギリス国内でアニマルセラピーの普及を行っているのはスキャス(SCAS/The Society for Companion Animals Studies/コンパニオン・アニマル研究協会)です。スキャスは1979年に精神科医、心理学者、ソーシャル・ワーカー、獣医師からなる集団によって、人とコンパニオン・アニマルの関係を深めるために創設されました。ここでいうコンパニオン・アニマルとは、一方的にかわいがるだけの愛玩動物、すなわち「ペット」という枠組みを超え、人間に対して癒しを与え、時として生きる支えにもなる大きな存在としての動物を指します。

国際レベルでは、人と動物の正しい関わり方(Human Animal Interactions/HAI)に関する知識を広めるため、アメリカの「デルタ協会」、イギリスの「スキャス」、そしてフランスのアフィラック(AFIRAC/Association Francaise d’Information et de Recherche sur l ‘Animal de Compagnie)が中心となって1980年に設立されたアイアハイオ(IAHAIO/International Association of Human-Animal Interaction Organizations)が有名です。最新の研究、教育や実践の発展、情報やアイデアを共有することで各国間の協力体制を強化するためのフォーラムの開催、人間と動物双方の利益となるような国際レベルの指針を示すことができる意思決定者の教育、等を最終目標としています。

日本におけるアニマルセラピー

アニマルセラピーという言葉は、実は日本における造語で、医師を始めとする医療従事者が参画して行う動物介在療法(Animal Assisted Therapy, AAT)と、医師を伴わずに動物とのふれあいを通じて生活の質(Quality of Life, QOL)の向上を目指す動物介在活動(Animal Assisted Activity, AAA)、 そして動物の飼育を通じて学童の社会性や協調性、思いやりの心などを育てる動物介在教育(Animal Assisted Education, AAE)などを合わせた日本独自の概念といえます。

日本国内でアニマルセラピーの普及に努めている団体としては、主に以下のようなものがあります。


日本動物病院福祉協会(JAHA)

日本におけるアニマルセラピーは、日本動物病院福祉協会(JAHA)が中心となって普及に努めています。JAHAは動物病院を中心として1978年に創立された社団法人で、主に人と動物双方の福祉と生活の質の向上、人と動物と環境との調和に貢献することを目的として活動しています。

JAHAが推進しているボランティア主体のアニマルセラピーは総称して、CAPP活動(Companion Animal Partnership Program =人と動物のふれあい活動)と呼ばれ、高齢者施設、病院、学校などを定期的に訪問しています。犬、猫、ウサギ、モルモットなど、人間と共に暮らしてきたコンパニオンアニマルであればCAPP活動への門戸が開かれており、以下に示すような条件をクリアすれば、参加できる可能性が高いといえます。

「CAPP活動に参加する動物の資質」

  • 人間大好きで人見知りしない
  • 他の動物たちとも仲良くできる(こわがったり、攻撃したりしない)
  • 見慣れないものや、大きな音なども大丈夫
  • おすわり、マテなどの基本的なしつけができていて飼い主が確実にコントロールできる(犬の場合)
  • 健康管理はバッチリ(定期健診、予防)
  • 生後8ヶ月以上

NPO法人日本アニマルセラピー協会

NPO法人日本アニマルセラピー協会ではセラピー犬と一緒に、高齢者介護施設や学校・幼稚園・保育園などを訪問してアニマルセラピー活動を行っています。日本アニマルセラピー協会の具体的な活動内容は以下です。

日本アニマルセラピー協会の活動

  • 犬を飼う方々のマナー指導活動
  • 犬のしつけ教室
  • 犬に関する全ての相談
  • セラピードッグと共に、各老人ホームの訪問
  • セラピードッグと共に、各養護施設の訪問
  • セラピードッグと共に、各種幼稚園・小学校の訪問
  • 諸外国のアニマルセラピー協会視察
  • 諸外国とのアニマルセラピー協会との交流
  • 1万人のアニマルセラピストの育成
  • 1万頭のセラピードッグの育成
  • 1万人の賛同者(会員)募集活動
  • 犬の育成及びアニマルセラピーに関する資格取得講座、認定試験

日本においてアニマルセラピーを行う際は、国家試験を通じて免許を取得するのではなく、民間の専門学校などを卒業して資格を認定されるという形が現状ですが、日本アニマルセラピー協会ではアニマルセラピスト(初級コース受講料・登録料179,000円~)、セラピー犬(受験料・登録料21,300円~)、等の認定を行っています。


その他、NPO法人

その他、NPO法人としてアニマルセラピー活動を行っている団体は以下です。

アニマルセラピーに携わるNPO

アニマルセラピー活動の種類

アニマルセラピーは主として、老人福祉施設(デイサービス・老人短期入所施設・養護老人ホーム・特別養護老人ホーム・老人福祉センター・老人介護センター)、知的障害者施設、小児病棟、刑務所、精神科病棟などにおいて行われますが、セラピーの実施される場所や訪問形態から、おおむね以下の5つに分類されます。

アニマルセラピー活動の種類

  • 施設訪問型動物を連れたボランティアなどが老人ホーム、精神科病棟、重度心身障害者施設、ホスピス、エイズ患者施設などを訪問する
  • 施設飼育型老人ホーム、小児病棟、刑務所、精神病棟などで動物を飼育することで、情操教育や精神療法、リハビリの動機付けを行う
  • 在宅訪問型外出したり自宅で動物を飼えない人の自宅へ、ボランティアやソーシャルワーカーが動物を連れて行く
  • 在宅飼育型自宅でペットを飼うこと自体をセラピーとしてとらえる
  • 屋外活動型乗馬療法(ホースセラピー/Hippotherapy)やイルカ療法など、患者自らが動物と触れ合うために外に赴く

在宅飼育型とはペットを飼う人全員に当てはまるアニマルセラピーといえますが、「心臓疾患を有する患者を追跡調査したところ、ペットを飼っていない人の1年後死亡率が28.2%(11人/39人)だったのに対し、ペットを飼っている患者のそれは5.6%(3人/53人)だったという調査結果もあります(Friedmann/1980)。 このことからペットを飼っていると長生きできるという風説は、あながち単なる都市伝説ではないようです。

アニマルセラピーの効果

 1988年にJulia K. VormbrockとJohn M. Grossbergが行った実験では、犬をなでているときに被験者の血圧が低下することが報告されました。この実験が示すように、人と動物とが接触することで様々な心身の変化が起こりますが、一般的にアニマルセラピーから受ける恩恵は以下の3つに分類されます。

生理的効果(せいりてきこうか)

生理的効果とは体内において生理学的な変化(ホルモンや脳内の伝達物質、神経系の変化)が生じることによるプラスの効果です。

たとえば、動物と接する人の脳内では「ドーパミン」という脳内伝達物質の分泌が増えるといわれています。このドーパミンは「楽しい」という感情の源ですので、セラピーを受けている人の中では「動物と接していると楽しい!」という体感として経験されます。

また動物と接しているときの人間の体内では「副交感神経」(ふくこうかんしんけい)が優位になっていると言われています。「副交感神経」は「交感神経」と対になって「自律神経」(じりつしんけい)とも呼ばれますが、末梢神経の拡張、血圧の低下、心拍数の抑制など、いわゆる「リラックス」した状態を作り出す神経です。動物と接して「落ち着く」、「癒される」という感じを多くの人は体験しますが、このとき体内で副交感神経が活発になっていると考えられます。

具体例としては、エリカ・フリードマンとメリッサ・グッドマンらが、人が他人と話しているときと、ペットに触りながら話しかけるときの血圧を比較するという実験を行っています。結果は以下。 出典⇒あなたがペットと生きる理由(ペットライフ社)

対人・対ペットの最高血圧比較図
対人・対ペットの最高血圧比較図

このように、「人ではなく動物に話しかけること」には血圧を下げ、ストレスを軽減する効果があることが判明しました。また子供に対する朗読実験においても、部屋の中に犬がいるときの方が、朗読中の緊張感が緩和され、血圧が低くなる傾向があるとの結果が出ています。

心理的効果(しんりてきこうか)

心理的効果とは動物との接触によって人の内面や行動がプラスの恩恵を受けることです。

たとえば、一度動物と接して楽しい経験をすると「イヌのおなかは柔らかかったなぁ・・」、「またワンちゃんに会いたいなぁ・・」というように、頭の中で動物とのセッション風景を思い返すだけで、そのときに経験した「楽しい!」という感情が再現されるようになります。動物と触れ合った記憶の想起により日常生活の中で「楽しい!」という感情が増えると、単純に抑うつ症状の改善になりますし、ホリスティック(全体的・全身的)な観点で見ると、免疫力の向上にもつながるでしょう。

また「動物ともう一度触れ合いたいから学校に行こう!」、「イヌと散歩したいからリハビリがんばろう!」といった思考に結びつけば、患者を回復に向かわせる動機付けとして機能しているといえます。

社会的効果(しゃかいてきこうか)

社会的効果とは、動物と接することにより、人と人との交流が円滑になる効果を指します。

たとえば、老人ホームにおいて人とほとんど口を利くことのなかった非社交的な老人が、アニマルセラピーの一環として触れ合った犬の話題を通じて、他の入所者と会話するようになるとか、あるいは人間関係が希薄になりがちな震災後の仮設住宅において、犬や猫などのペットが住民たちの会話の潤滑剤になってくれる、といった具合です。

また、動物の持つ印象効果に関しては、複数の研究者によって以下のような結果が報告されています。 出典⇒あなたがペットと生きる理由(ペットライフ社)

動物の社会的印象効果

  • ピーター・メセント 一人で歩いている人よりも犬を連れている人の方が話しかけられる割合が高い。また、赤ちゃんを連れている人よりもペットを連れている人の方が近づきやすい。
  • ランダル・ロックウッド 人とペットが一緒に写った写真を見せたところ、社交的な魅力が増し、好ましい印象を他人に与えることが分かった。
  • リネット・ハート 障害を持つ子供たちが注目されたり話しかけられたりする機会は、サービスドッグがそばにいるだけで1人で歩いているときの10倍も多い。
  • アラン・ベックとキャッチャー 囚人や神経麻痺のある人が動物と一緒に写った写真を見せると、魅力的な印象を見る側に与える。

こうした事実はすべて「動物と一緒にいることで他人に好印象を与え、その結果交流する可能性が増えるかもしれない」ということを意味しています。アメリカ大統領がホワイトハウスに犬を迎え入れることが慣例化していますが、上記した効果と無関係ではないのかもしれません。

アニマルセラピーの効果・具体例

上記したように、アニマルセラピーの効果は大別して3つに分類されますが、アニマルセラピーによって得られる身体的、心理的変化の具体例の一部をご紹介します。 出典⇒川添敏弘氏著・駿河台出版社の「アニマル・セラピー」

アニマルセラピーの効果・具体例

  • 老人の孤独感の減少(Marian & William/2002
  • 子供のストレス軽減効果(Nagengast/1997
  • 広汎性発達障害児童の集中力向上(Francois/2002
  • 小児がん患者の入院環境ストレス軽減(France/2002
  • 小児てんかん予知(Adam/2004
  • 抑うつ症状の減少(Sandra & Kathryn/1998
  • 統合失調症の意識変化(Inber/2005
  • うつ病や人格障害患者の症状軽減(Yamazaki & Machizawa/1994
  • 境界性人格障害の症状軽減(Sato/2003
  • 脳血管性痴呆患者の運動機能回復(Motooka/2002
  • 副交感神経の亢進作用(Motooka/2002

余談ですが、米小児科学界の医学誌「ペディアトリクス」のオンライン版は2012年7月9日、家で犬を飼っている幼児は、犬を飼っていない幼児より健康で、耳の感染症が少なかったという概要は以下。

犬の飼育と幼児の免疫力

動物の代わりとしてのエンタテインメントロボット

生きている動物の場合、アレルギーや事故、人獣共通感染症(動物から人へ感染する病気)などへの不安から、導入するのが難しいという状況が時として発生します。しかし動物と接することが難しい患者や環境でも、比較的安心して導入できるのがロボットセラピーです。これは動物を模した人工的なロボットを生身の動物の代わりとして用いる手法ですが、患者に対して短期間に刺激を与え、気力を鼓舞する補助として利用できる可能性が十分にあります。有名なところではソニーの犬型ロボット・AIBO(生産中止)やオムロンの猫型ロボット・ネコロ(生産中止)がありますが、その効果の高さからギネスにまで認定されたのが、アザラシ型ロボットパロです。

パロは、本物の動物を飼うことが困難な場所や人々のために、セラピーを目的に1993年から研究開発されたロボットで、デイサービスセンター、介護老人保健施設、特別養護老人ホーム、小児病棟、児童養護施設などで、数多く、長期間に渡る実験を続けることにより、アニマル・セラピーと同じ効果を得られることが確認されています(独立行政法人・産業技術総合研究所のレポート)。また国内の様々な施設だけでなく、スウェーデン・カロリンスカ病院および国立障害研究所、イタリア・シエナ大学付属病院、フランス・カーパプ病院、アメリカ・スタンフォード大学付属病院でもパロによるロボット・セラピーの研究を実施し、非常に良好な結果を得ており、これらの実証実験の成果が認めら、平成14年2月には、世界で最もセラピー効果があるロボットとしてギネス世界記録に認定されています。

メンタルコミットロボット「パロ」

以下でご紹介するのは、株式会社知能システムが開発し、世界で最もセラピー効果があるロボットとしてギネス世界記録に認定されたアザラシ型ロボット「パロ」の動画です。

セラピードッグの仕事

アニマルセラピーに用いられる動物は、一般的には情緒レベルが高い哺乳類が採用されます。ここで言う「情緒レベルが高い」とは、人間の喜怒哀楽に何らかの形で共鳴してくれるという意味です。アニマルセラピーは様々な哺乳類が用いられますが、人との接触でストレスを感じやすかったり(ネコ)、人との接触によるリアクションが他の動物に比べて薄かったり(ウサギ)、人と接するには時間と空間の制約が大き過ぎたり(ウマやイルカ)、いろいろな障壁もあります。

そうした中でイヌはセラピーアニマルとして広く用いられ、セラピードッグやヒューマン・ケナイン・ボンド(Human Canine Bond/人と犬の絆)という特殊な用語もあるくらいです。これはイヌのもつ生来の社交性(長時間人と接していてもストレスを感じにくい)、反応の素直さ(人との接触でリアクションが大きく、喜怒哀楽がわかりやすい)、身近さ(時間・空間的な制約を要さない)などが評価され、きわめて良質のセラピー効果を生むことが確認されているためです。

ヒューマン・ケナイン・ボンド~人と犬の絆

1983年、ウィーンで開催されたシンポジウムにおいてレオ・K・バスタド医師が初めて用いたHuman Animal Bond(ヒューマン・アニマル・ボンド=人と動物との絆)という言葉は、その後に設立されたデルタ協会の普及活動により、世界的な認知を得ていきました。そして今日、全米獣医師協会は明確にこの「Human Animal Bond」の意義を認めています(AVMA policy The Human-Animal Bond)。

全米獣医師協会の声明

ヒューマン・アニマル・ボンドとは人と動物の双方にとって有益かつ動的な相互関係であり、その関係は人と動物の両者の健康と福祉にとって重要な振る舞いによって影響される。(中略)獣医師の役割は、人と動物の関係が持つ可能性を最大限に引き出すことにある。
全米獣医師会は公式に以下の点を認める。

  • ヒューマン・アニマル・ボンドは確実に存在し、患者やコミュニティの健康にとって重要であること
  • ヒューマン・アニマル・ボンドは、過去数千年にわたり存在してきたこと
  • 人と動物双方の要求に応える獣医学の分野において、ヒューマン・アニマル・ボンドはきわめて重要であること

人と犬との絆をあらわすヒューマン・ケナイン・ボンド(Human Canine Bond)という言葉は、このヒューマン・アニマル・ボンドから派生したものです。

セラピードッグの育成

日本においてセラピードッグを育成している団体はいくつかありますが、もっとも有名なのが国際セラピードッグ協会です。当協会では、代表を務める大木トオル氏が30年に及ぶ米国での経験をもとに、日本におけるセラピードッグの社会啓蒙活動を行うと共に、セラピードッグの育成とトレーナーの育成支援を行っています。各地の動物愛護センターなどに収容されて殺処分を待つ捨て犬たちを引き取った後にセラピードッグとして育成し、保護された犬たちを第二の犬生に向けて送り出してるのが大きな特徴で、書籍やテレビなどでも紹介された名犬チロリは有名です。

国際セラピードッグ協会では、大木氏自らが考案した45以上のカリキュラムを2年以上かけて犬たちに教え込みます。同氏の著書「セラピードッグの世界」(日本経済新聞出版社)からその一部を抜粋すると以下のような感じです。

国際セラピードッグ協会・訓練カリキュラム

  • カリキュラムA犬に指示を出す際のボイスコール、ハンドコール等のコーリングマナー、シット(おすわり)やレイダウン(伏せ)等、あらゆる場所で必要とされる基本動作であるスタンダードマナー、並足や駆足など歩くときのスピードを調整するウォーキングマナー、複数の犬を同時に移動させる際のラインマナー
  • カリキュラムBハンドラーと犬が現場になれるためのフリーラウンド、障害を抱えた人と歩行する際のウォーキングマナー・ステップ2
  • カリキュラムC歩行者が急停止、急反転しても、犬がピッタリ寄り添って歩行できるようにするウォーキングマナー・ステップ3、杖の落下や突然の物音に遭遇しても冷静さを失わないケインドロップ
  • カリキュラムD犬を操るハンドラーのリーシコントロールトレーニング
  • カリキュラムE車椅子利用者と犬の同速歩行訓練であるホイールチェアマナー、人間のひざの上に犬を上手に乗せるホールディングマナー
  • カリキュラムF公共スペースで正しく人々の邪魔にならないよう行動させるインドアエリアマナー
  • カリキュラムG病院や福祉施設などの個室において、ベッドに寝ている人を対象とした訓練であるベットマナー

アニマルセラピーの注意点

通常、セラピードッグの活動は、犬の疲労を考慮して30~50分くらいが一般的になっています。これは人間の都合に合わせてセラピードッグを酷使してしまうと、たとえ人間が元気になったとしても、逆に犬が体調を崩すかもしれないからです。セラピーロボットと違い犬は生身の動物ですので、セラピードッグを用いたアニマルセラピーを行う際は、犬の側の健康と福祉にも配慮しつつ、主に以下のような点に注意を払う必要があります。

アニマルセラピーを行う際の注意点

  • 動物にストレスとなるほど長時間従事させない
  • 抑うつ状態が強いと患者にとっては、動物やボランティア、ソーシャルワーカーとの接触が逆に負担となったり、攻撃の対象となったりする
  • 多くの人が共同で利用する施設などでは、動物嫌いの人もいるので、事前に調査する
  • 人間の側にアレルギーや特定動物に対する恐怖症がないことを確認する
  • 免疫機能が低下している患者にとっては命にかかわる人獣共通感染症の予防を徹底する

「わいわいルーム」のエステルちゃん
セラピー犬に認定

エステルちゃん

2011年11月1日 ブリーダーで誕生
2011年12月中旬 パピーウォーカーに委託(パピーウォーカーにて命名)
家庭の愛情と養育そして訓練(基本訓練)
2012年7月中旬 関西盲導犬教会へ
  基本訓練
使用者の指示に従い、行動する服従訓練と歩行訓練があります。
(1)服従訓練
◆具体的な服従訓練の内容
・カム(来い)
・シット(座れ)
・ダウン(伏せ)
・ウェイト(指示した場所で待つ)
・呼んだらすぐに使用者の左側の足下に来て座る
・落とした物を拾う
※ 使用者の左側の足下は、盲導犬の所定の位置です。
(2)歩行訓練
◆具体的な歩行訓練の内容
・段差や階段の昇り降り
・障害物を回避する
・横断歩道や踏切りを渡る
・電車やバスの乗り降り
・交差点あるいは曲がり角で一旦停止
・人混みの中での歩行
・外出先での待つ方法
・町の中を周囲のあらゆる誘惑(他の犬や猫やゴミなど)に気を取られずに、真っ直ぐ歩く
ステップⅠ 【10週間】の訓練合格
誘導訓練
誘導訓練 とは、ハーネスを犬の体に着け、基本訓練を応用し、指示に従って使用者をきちんと目的地まで誘導させる訓練です。
また、 この訓練には不服従訓練も含まれます。
(1)誘導訓練
この訓練では、常に犬は"使用者の体の大きさ"について考え、犬がその場の状況に対応しながら使用者を誘導するように訓練します。
たとえば、歩行している道の先で犬のはるか頭上に木の枝などがあると察知した場合、使用者がそのような障害物にぶつからないよう に歩きます。
(2)不服従訓練
盲導犬は使用者の指示に従うことを第一に考えるように訓練されています。しかし、その指示に従うと、使用者が危険だと盲導犬が察知した場合に は、使用者が「ゴー(=進め)」と指示をしても、盲導犬自身が危険な状態だと判断して使用者の命令には従わずに、使用者の身を守れるようにする 訓練です。
つまり、この訓練で必要とされる犬の力とは・・・
・応用力
・的確な判断力
この2つが求められるとても難しい訓練です。
では、この不服従訓練は実際にどのような場面で役に立つのでしょうか?
例)横断歩道
使用者が横断歩道を渡るように「ゴー(=進め)」と盲導犬に指示を出したとしても、車などが接近してきて危険だと盲導犬自身が判断したときには 、使用者の指示には従いません。
ステップⅡ 【10週間】の訓練合格
基本訓練の仕上げ~~アイマスク・テスト~
歩行指導員が「アイマスク」で目隠しをして犬と歩き、 訓練の成果と、犬の盲導犬としての適性を確認します。
※ 実際に視覚障害者を誘導する場面を想定するために、アイマスクを利用しています。
その後、適性があると判断された候補犬は約1ヵ月をかけて、いよいよ使用者となる視覚障害者との共同訓練が行われます!
※ ここで失敗した場合は再び訓練を行い、最終的に適正判断がされます。
共同訓練
使用希望者は、実際に街に出て歩き、以下のことを学びます。
・盲導犬との歩行方法
・盲導犬に関する必要な知識
・排便などを含む世話の仕方や健康管理
<<大事>>
視覚障害者が盲導犬と歩くことを希望し、盲導犬を使用するための必要な条件
各盲導犬協会で定められた期間を訓練所で暮らしつつ、候補犬との共同訓練を受けなければならない
ステップⅢ 【5週間】の利用者との適合訓練
卒業試験~認定~
最後に使用希望者と候補犬とが一緒に町を歩く卒業試験です。この試験では以下の点が確認されます。
◆確認内容
・候補犬がきちんと使用希望者を誘導できるか
・使用希望者が的確な指示を候補犬に出せるか
合格すると、補助犬として社会的に認められます。
認定は、盲導犬とその使用者のペアで認められています。
2013年7月中旬 キャリヤチャレンジ犬になる(使用者のペア)
2013年7月23日 くすり屋のケアショップ・わいわいルーム
管理者 市川惠一 に譲渡
わいわいルームで障害児へのセラピー
2014年2月10日 日本アニマルセラピー犬協会からセラピー犬認定
  【受験資格】
4ヶ月以上の犬
性別問わず
ワクチン接種が済んでいること
トイレの躾が出来ていること
合格の目安
誰に体のどこを触られても、嫌がらない犬である事!!
他の犬と仲良くできること
座れ・待てが出来ること(出来れば伏せも)
無駄吠えが無いこと
飛びつかないこと
実技
当協会指定場所にて実施
実施時間 約 30分
内閣府認定「NPO法人日本アニマルセラピー協会」

「身体障害者補助犬」とは、盲導犬、介助犬及び聴導犬をいう。
盲導犬は、視覚障碍者。 介助犬は、身体(肢体)障害者。 聴導犬は、聴覚障害者。

1. 訓練内容等について

介助犬の訓練は、基礎訓練、介助動作訓練及び合同訓練の3段階において行うことを基本とし、それぞれの訓練記録を作成、保管すること。また使用者への引き渡し後も、継続的な訓練及び指導を行うこと。

1.基礎訓練
基礎訓練とは、犬に対する基本的なレベルの訓練をいう。なお、通常生後12か月から24か月の間に訓練を開始するのが望ましい。

(1) 基礎訓練においては、概ね次のような基本動作を確実に行えるよう訓練すること。
[1] 呼んだら来る
[2] 座る、伏せる、待つ、止まる
[3] [2]の状態について、解除の意思表示があるまで維持できる
[4] 強く引っ張ることなく落ち着いて歩く
[5] 指示された時・場所で排泄できる
[6] 音響、食物や他の動物など様々な刺激や関心の対象を無視できる
[7] 使用者に注目して集中することができる
[8] 指示された場所(部屋、車等)に入ることができる

(2) 上記の基本動作は、室内におけるだけでなく屋外においても行えるように訓練されなければならない。その場合、次のような環境においても、必要に応じて可能な限り訓練を行うこと。ただし、その際には、受け入れ側の事情にも配慮しつつ、犬が一定程度習熟された段階で実施するものとし、訓練者は周囲の人や施設に迷惑・危害をおよぼさないように責任をもって管理すること。
[1] 公共交通機関(電車、バス等)
[2] ホテル等の宿泊施設
[3] スーパー、百貨店等の商業施設
[4] レストラン、喫茶店等の飲食施設

(3) 基礎訓練は、実働日数として概ね60日間以上行うこと。

2.介助動作訓練
介助動作訓練とは、肢体不自由者の日常生活動作を介助するために必要な動作訓練をいう。

(1) 介助動作訓練においては、使用者のニーズに応じて、概ね次のような介助動作を確実に行えるよう訓練すること。
[1] 物の拾い上げ及び運搬
[2] 特定の物を手元に持ってくる
[3] ドアの開閉
[4] スイッチの操作
[5] 起立、体位変換時の介助
[6] 車いすへの移乗介助
[7] 歩行介助と姿勢支持
[8] 階段昇降の介助
[9] 車いすの牽引等
[10] 衣服や靴等の着脱
[11] 緊急時の連絡手段確保

(2) 上記の介助動作は、室内におけるだけでなく屋外においても行えるように訓練されなければならない。
(3) 介助動作訓練は、実働日数として概ね120日間以上行うこと。 但し、介助動作訓練は基礎訓練と並行して実施して差し支えない。
(4) 介助動作訓練は、専門職との協力体制によって使用者の障害とニーズについての正しい評価に基づいて作成された訓練計画により行うこと。
(5) 介助動作訓練の過程において、使用者と候補犬との適合評価をできるだけ早期に行うこと。

3.合同訓練
合同訓練とは、使用者本人が犬に指示をして、基礎動作及び介助動作を適切に行わせることができるようにする適合訓練をいう。

(1) 合同訓練においては、概ね次のような訓練及び使用者に対する指導を行うこと。
[1] 使用者の障害やニーズに合わせた訓練
[2] 使用者の生活環境(室内外)に合わせた訓練
[3] 使用者に対する犬の飼育管理、健康管理、給餌、排泄等に関する指導
[4] 公共交通機関、宿泊施設、商業施設及び飲食施設等の利用施設に同伴する訓練

(2) 合同訓練においては、使用者に対する犬とのコミュニケーション手段の指導を行うこと。
(3) 合同訓練は、実働日数として概ね40日間以上行うこと。
(4) 合同訓練の最終段階では、使用者の自宅、職場又は学校において(1)の[1]から[3]の内容を概ね10日間以上行うこと。
(5) (1)の[4]については、受け入れ側の事情にも配慮しつつ、実施するものとし、訓練者は周囲の人や施設に迷惑・危害をおよぼさないように責任をもって管理すること。

4.継続的な訓練・指導
介助犬使用者の障害やニーズの変化あるいは環境の変化等に対応するため、犬の引き渡し後においても継続的な訓練及び指導を行うこと。

(1) 継続的な訓練及び指導は、概ね次の点について行うこと。
[1] 使用者の障害やニーズの変化に応じた補充訓練
[2] 環境の変化に応じた追加訓練
[3] 使用者の必要に応じ、犬の基礎動作及び介助動作の再訓練
[4] 介助犬の健康状態及び行動・作業状況の確認と指導
[4] 犬のリタイア時期及びリタイア後の対応についての相談・指導

(2) 最低1年に1回は、(1)の[1]から[4]の内容について使用者から報告を求めるとともに、必要に応じて自宅を訪問する等により継続的な指導を行うこと。なお、最初の一年目は2~3ヶ月に一度は報告を求めること。

2. 訓練体制について

介助犬育成団体は、使用者が介助犬に求める様々な介助ニーズに対応するため、相当な経験を有する訓練者を配置するとともに、専門家等の協力体制を確保しておくこと。
なお、訓練者等は、使用者のプライバシー保護に十分留意すること。

1.訓練者の要件
(1)訓練者は、人と犬に対し愛情と思いやりを持ち、安全性に関する責任を持って訓練を行うこと。
(2)訓練者は、犬の飼育管理及び訓練を適正に行うための必要な知識及び技術を有していること。
(3)訓練者は、犬の社会適性及び作業適性についての評価と選択ができること。
(4)介助動作訓練及び合同訓練を行う訓練者は、障害、疾病及びリハビリテーションについての基礎的知識を有していること。

2.専門職の協力体制
介助犬育成団体は、医師、獣医師、作業療法士、理学療法士、社会福祉士等の専門的知識を有する者の協力体制を確保しておくこと。
少なくとも次のような評価等は、介助犬育成団体のみによって行われるのではなく、その内容に応じ、専門的知識を有する者とともに行われること。
(1)候補犬導入段階における犬の身体面及び性質面の適性評価(特に身体面では、代表的遺伝性疾患で問題となる眼、心臓、関節の評価を含む)
(2)使用者の適性・適応評価
(3)使用者のニーズ評価と介助訓練計画の作成
(4)使用者と候補犬との適合評価
(5)合同訓練終了後の総合評価・判定

その他の協力体制
介助犬育成団体は、必要に応じて、地域の障害関係施設、福祉関係者、ボランティア等の協力体制を確保しておくこと。

3.介助犬の適性について

介助犬としての訓練を行うに際しては、その犬の身体及び性質についての適性評価を行うこと。

1.身体
(1)体高や体重は、使用者のニーズに対して適正なものであること。
(2)健康で体力があり、遺伝性疾患及び慢性疾患を有していないこと。
(3)被毛の手入れが容易なこと。

2.性質
(1)健全で陽気な性格であり、動物や人間に対して友好的で臆病でないこと。
(2)人間と一緒にいることを好むこと。
(3)他の動物に対して強い興味を示さず、挑発的な行動をしないこと。
(4)攻撃的でなく、過剰な支配的性質を有していないこと。
(5)大きな音や環境の変化に神経質でなく、落ち着いていられること。
(6)平均的な触覚、聴覚及び感受性を有していること。
(7)集中力と積極性及び環境への順応力があること。
(8)乗り物酔いがないこと。

4.適性犬の確保及び健康管理等について

1.安定的な確保
(1)介助犬育成団体は、候補犬として適性のある犬を安定して確保するよう努めなければならない。
また、適性がないと判定された犬について譲渡先を予め確保しておく等の配慮が必要である。
(2)介助犬を繁殖させる育成団体にあっては、遺伝性疾患が生じるおそれのある犬を繁殖の用に供さないように努め、また、候補犬の選定にあたっては、遺伝性疾患のおそれのある犬を選定しないように努めなければならない。

2.健康管理等
(1)健康管理義務として、毎年1回、狂犬病ワクチン接種等を行うとともに、避妊・去勢手術を施すこと。
(2)獣医師による定期的な健康診断や検査等を行うこと。
(3)犬に起因する感染性の疾病について正しい知識を持ち、人への感染の防止に努めること。
(4)犬の疾病及びけがの予防、並びに寄生虫の予防と駆虫等日常的な健康管理に努めること。

聴導犬の訓練

●訓練の進め方
・遊び感覚で楽しみながらする。
・うまくできたら褒めてあげる。
・呼んだら来るのではなく、 合図したら来る ようにする。
この3つのことを意識しながら訓練を進めていきます。

●聴導犬になるまで
聴導犬は3つの訓練を受けます。
①「基礎訓練」
②「聴導動作訓練」
③「合同訓練」

●基礎訓練
実働日数:犬の性格や状況によっても異なりますが、約60日間行います。基本動作(=指示をしたら来る、座る、伏せるなど)を主な仕事場となる屋内だけではなく、電車やタクシーなどの公共交通機関、映画館やスーパーマーケットなどの公共の場でも的確に行える ように訓練をします。

●聴導動作訓練
実働日数:約100日間

◆音の訓練
(1)音が鳴ったら、聴導犬は訓練士のひざなどの上に前足をのせるように訓練し、それができる度にご褒美としてドッグフードを与える。
(2)聴導犬はドッグフードが欲しくて訓練士の体に自然と前足を乗せたとき、音を鳴らして褒める。
(3)ドッグフードなしで、音が鳴ったら訓練士のひざに前足を乗せるように訓練する。
(4)目覚まし時計の音など、仕事に必要な音を訓練内容として追加する。

◆音源に誘導させる訓練
(1)必要な音を聞いて、犬が訓練士の膝の上などに前足をのせる。
(2)音が鳴ると同時に、もう一人の訓練士が音源でチーズを使い、チーズのにおいを放つ。
(3)犬がチーズのにおいに誘われて、チーズのにおいのする場所(=音源)まで行く。

★必要な音に反応し、音源を確認し、音源まで使用希望者を誘導できるように訓練します。
★火災報知機などの危険信号を知らせるように訓練します。
※ 日常生活で必要な音とは・・・
・目覚まし時計、タイマー、笛吹きやかんの音、ファックスの受信音、火災報知機、ドアノック、赤ちゃんの泣き声など

●合同訓練
実働日数:約10日
(最終段階の5日間は、使用希望者の自宅や職場など実際の聴導犬の仕事場での訓練となります。)
聴導犬候補犬と使用希望者が対面をして、相性が良いと認められた使用希望者自身が、聴導犬候補犬に 指示をして、基礎動作と聴導動作を行わせます。

◆訓練内容
・使用希望者の実際の生活環境に合わせた訓練
・犬の飼育方法
・犬の健康管理の指導
・映画館やスーパーマーケットなどの公共施設の利用に際しての同伴訓練

●認定
合同訓練を終えて、聴導犬候補犬と使用希望者は、聴導犬の認定を行う指定の法人の試験に合格したら、認定を受けます。 そして初めて、聴導犬は「補助犬」として社会的に認められます。
認定は聴導犬とその使用者のペアで認められています。

●認定後
合同訓練を終えて認定されても、育成団体は聴導犬を訓練、指導し続けます。 なぜでしょうか。
それは、聴導犬の使用者の老いあるいは結婚などから生活環境が変わり、それに応じて必要な音も変わることが考えられるからです。
このように、その犬がリタイアするまで使用者の生活が変わっても、また新たに必要となる音を知らせてくれるようにするために、訓練をし続けるのです。